ヨイマチ

Yoimachi

ヨイマチは、見慣れた日常の風景にひとつだけ現実からずれたものを紛れ込ませ、世界の境目がふとひらく瞬間を描き出すアーティストである。制服の少女、雨の路地、花の咲く垣根、夏の夕暮れ。どこかで見たはずの情景を舞台にしながら、そこに置かれた一枚の面や外された視線によって、見る者を日常と非日常のあわいへと連れ出す表現者である。

その表現は、青や紫、深い緑を基調とした寒色の色設計と、そこに一点だけ差し込まれる朱の対比によって成り立っている。画面は厚みのあるストロークの重なりで組み立てられ、花や雨、布の皺までもが筆致の痕跡として残される。描き込まれた質感の密度が日常の確かさを支え、その確かさがあるからこそ、紛れ込んだ異物の違和感が静かに際立つ。

ヨイマチの描く人物は、多くを語らない。顔を隠し、目を逸らし、感情を表に出さないまま画面に立つ。説明を与えないことで、見る者はその佇まいの奥にあるものを自ら想像することになる。

ヨイマチの作品世界は、昼と夜、日常と非日常が入れ替わる宵の刻に立ちあらわれる、懐かしさと不穏さが同居する表現である。雨音の向こうから誰かに見られているような、静かな余韻を残すアーティストである。

コレクション: ヨイマチ