NOCTIS
ノクティス
NOCTIS(ノクティス)は、夜の底に沈んだ宇宙を舞台に、ひとりの旅人と巨大な何かとの出会いを描くアーティストです。空はプルシャンブルーから漆黒へと静かに沈み、その闇のなかで、遺跡に残る残照や船窓に灯る火、遠い恒星のまたたきだけが、琥珀色の温度を持って画面に散らばります。
登場するのは、いつも宇宙服に包まれたたったひとりの人物。画面のなかでその姿は驚くほど小さく、崩れ落ちた神殿、雲を割って進む帆船、星の砂が落ちつづける巨大な砂時計といった、名前のつけられない存在と静かに向かい合っています。恐れて後ずさるのでもなく、征服しようとするのでもなく、ただ立ち止まって見上げる。その距離感が、NOCTIS の画面の呼吸を決めています。
色彩は深い青の階調が支配し、そこへオレンジと琥珀の光がごく限られた面積で差し込みます。青がどこまでも冷たく広がるほど、わずかな灯りは人の側のものとして際立ち、広大な暗闇のなかに小さな居場所が生まれます。粒立ったマットな絵肌が、その光をやわらかく拡散させ、記憶のなかの一場面のような手触りを残します。
神話と科学、遺跡と宇宙という本来交わらないものを同じ画面に置きながら、NOCTIS の作品はそれを説明しません。何が起きているのかを語らないまま、見る者を旅人と同じ位置に立たせ、ただ見上げる時間だけを差し出します。そこに残るのは、畏怖と郷愁がひとつになった、名前のつけがたい静けさです。



