月森 灯は、白樺の森と朝の空を背景に、詩的な静物たちが佇む風景を描くアーティストです。まるで物語の始まりのような木製テーブルには、本やパン、コーヒーが静かに置かれ、誰かがいたはずの余韻だけが残されています。空は淡いピンクからラベンダーへと移ろい、木々のすき間からこぼれる光や浮かぶ雲が、現実と幻想のあいだにある柔らかな時間を演出しています。

絵本のように平面的でありながら、モチーフには質感があり、視覚的なあたたかさと静謐さが共存しています。作品には人物が描かれていないにもかかわらず、確かに「誰かの気配」が感じられ、それが見る人の記憶や感情をそっと揺らすのです。静かでやさしく、そして少しだけ不思議なその空間には、言葉にできない物語が流れており、観る人それぞれの想像力によって完成する余白が広がっています。

月森の作品は、日常と夢の境界線をふわりと越えて、「懐かしさの中にある新しさ」や、「孤独の中にあるぬくもり」を感じさせてくれるアートです。インテリアとしても空間にやわらかな空気を届け、見るたびに心を落ち着かせるような静かな魅力を持っています。