黒野 遥

Kurono Haruka

黒野 遥(くろの はるか)は、アニメ背景風のリアルタッチをベースに、SFやポストアポカリプス的世界観を重ね合わせた風景作品を描くアーティストです。朽ちた観覧車や錆びついた宇宙船、瓦礫の中に残る図書館の一角など、「かつて栄えていた文明の名残」と、そこに静かに広がる草花や空、水面といった自然の再生とが共演する風景には、「絶望よりも希望の萌芽」が宿ります。

その筆致は緻密で、描き込まれた廃墟のひび割れひとつ、水面の揺らぎひとつにも確かな温度を感じさせるほど。澄んだブルーを基調とした色彩設計は、自然の美しさを引き立てると同時に、陰影のコントラストによってドラマチックな物語性を生み出しています。まるで映画のワンシーンを切り取ったかのような没入感のある構図は、見る者に風の流れや音のない静けさまで想像させるほどのリアリズムを帯びています。

彼の作品に登場するのは、ほとんどが“誰もいない場所”。しかしそれは寂しさではなく、「ひとりでいること」への肯定であり祝福です。時間が止まったような廃墟の中に差し込む光や、わずかに揺れる草花の姿は、滅びの美しさと静かな希望を同時に映し出しています。人のいなくなった世界に、なお続いていく自然の息吹。黒野遥のアートは、失われた世界への哀愁と、そこに宿るの命の確かさを、静かに、しかし力強く伝えてくれます。

コレクション: 黒野 遥 | Kurono Haruka