Nokora

ノコラ

Nokoraの作品を前にすると、不思議な感覚に包まれる。

水面、石、泡、反射光——どれも現実にあるモチーフなのに、そこにあるのは「記憶の中にしか存在しない風景」のようだ。

グリーン、ミント、ターコイズ、そしてごく淡いコーラルピンク。

水と鉱石を思わせるこの色彩は、見る者の感情を静かに撫でながら、深い没入感へと導いていく。

『Stairway to Nowhere』『The Lone Cloud』『A Path Beneath Water』など、作品はどれも「どこでもなく、誰の中にもある風景」として現れる。

写実と抽象の境界線に立つビジュアルは、水のきらめきや岩のざらつきといった自然の細部を丁寧に拾いながら、空間そのものにはどこか夢のような不確かさをまとっている。

それは現実がふっと曖昧になる瞬間のようであり、思考が静まり返る静寂のなかの深呼吸でもある。

構図はミニマルで、リズムを感じさせる石の配置や、沈黙を宿した余白が際立つ。

音のない世界で、光と影だけがわずかに動き続けている——

Nokoraは、沈黙そのものを視覚化したアーティストなのかもしれない。

コレクション: Nokora | ノコラ